耳の手術
(1) 滲出性中耳炎の手術(鼓膜チューブ挿入術)
滲出性中耳炎が長期化した場合、鼓室の換気を図るため、鼓膜チューブ挿入術を行います(図1)。
■手術の実際
- 鼓膜に浸潤麻酔を行い、約10分後に鼓膜を切開します。
- 鼓室内の滲出液を細い吸引管で吸引、除去します。
- チューブのツバ部分を鼓室内に挿入し、これを固定します。手術時間は約5分です。
- 使用するチューブには短期間留置するのもと、長期間留置するものとがあります。
(2) 慢性中耳炎の手術(鼓膜形成術)
慢性中耳炎で穿孔が比較的小さく、耳小骨に異常がない場合には、日帰りの鼓膜形成術が可能です。この手術により約90%以上の確率で鼓膜を閉鎖できますが、まれに閉鎖不全を起こし再手術が必要なこともあります。
- 穿孔閉鎖のための準備:局所麻酔下で鼓膜閉鎖に用いる結合組織を採取します。当院では、耳後部に切開を加え、側頭部の筋膜や骨膜、あるいは耳介軟骨付き軟骨膜などを用いています。
- 鼓膜、外耳道の麻酔:麻酔液を染み込ませた綿花を用いて、鼓膜から外耳道の浸潤麻酔を行います。
- 穿孔辺縁の鼓膜切除:穿孔辺縁を全周性に鼓膜を切除します(図1)。
- 穿孔の閉鎖:先に採取した軟部組織を穿孔部分に落ち込まないようにパッチを行います。手術に要する時間は約30~50分(閉鎖に用いる結合組織により時間が異なります。)です。
- 閉鎖完成:写真5は術後3ヵ月の鼓膜所見です。この症例では耳介軟骨付き軟骨膜を用いて穿孔を閉鎖しました。矢印は耳介軟骨です。
- また、鼓膜穿孔が更に小さい場合には、リティンパ耳科用液(トラフェルミン浸潤ゼラチンスポンジ)を用いた鼓膜穿孔閉鎖術も行っています。この場合、鼓膜閉鎖に用いる結合組織を採取する必要はありませんが、術後再穿孔を起こし、計2~4回手術治療を行うことがあります。手術時間は約30分です。